リセット ~盛田隆二~
-
著者: 盛田 隆二
タイトル: リセット
これは、本当にリアルなんだろうか。読み終えた時の初めの感想でした。
もちろん小説なのでフィクションなのですが、現実に起きた少年事件を絡めながら進む
少年少女たちの抱えた様々な問題、ドラッグ・売春・暴力etcが妙なリアリティを持って
心の中をずさずさと切り込んできます。
親や社会も迷走していて余裕もなく、また様々な問題を抱えながらも一人で抱えるしか
ないことが多い現代社会において、少年少女も同じ状況に置かれている。
誰も解決できない、と言って放置することは許されない未成年の様々な問題。
でも答えを出すのは容易ではないというもどかしさがもやもやした読後感を呼び込んできました。
少年少女たちの思考の網が袋小路になっていく中で、周囲の誰かが”効果的に”手を差し伸べることも
容易ではないが、だからといってリセットなんて言葉で片付けてよいのだろうか。
そのようなことが良いはず無いと思います。
目をそらさずに現代社会の問題点を受け止める心積もりはあるか、と問いかけられているような作品でした。
愛情をもたらして親子の絆を深めるためには、大人が余裕を持つしかないのでしょうね。
青少年問題と言うのは実は大人社会の問題なのではと考えてしまいました。
文中の表現はかなりきついので、それを承知で読んでいただくと良いかと思います。